「味は悪くないと思うんだけどなぁ…」
開業して半年。
常連さんは少しずつ増えていたが、客数は伸び悩んでいた。
SNSも更新している。チラシも配った。口コミも悪くない。
でも、新規のお客さんが増えない。
ある日、常連のお客さんがぽつりと言った。
「ここ、ずっと気になってたけど、最初入りづらかったんですよ」
思わず聞き返した。
「え?どうしてですか?」
返ってきた答えは、予想外だった。
「何のお店か分からなかったんです」
その言葉で、すべてがつながった。
外に出てお店を見上げる。
そこにあるのは、店名だけのシンプルな看板。
オシャレだと思っていた。
でもそれは“お店を知っている人”目線だった。
通行人から見たらどうだろう。
・カフェ?
・雑貨屋?
・美容室?
分からない。
人は“分からないお店”には入らない。
そこで看板を作り直すことにした。
変更したのは、たったこれだけ。
店名の下に一行追加。
「手作り焼き菓子専門店」
さらに小さく
「クッキー・マフィン・ギフト」
たった数文字。
ところが変化はすぐに現れた。
看板変更から数日後。
初来店のお客さんが増え始めた。
「焼き菓子って書いてあったので」
「クッキー好きなんです」
「分かりやすくなりましたね」
1ヶ月後、売上は1.5倍に。
広告費はゼロ。
SNSフォロワーも変わらない。
変わったのは看板の情報量だけ。
このとき学んだ。
看板はデザインだけじゃない。
伝えるツールだ。
オシャレよりも先に必要なのは
「何のお店か一瞬で分かること」。
今では看板を見るたび思う。
あの一行が、未来を変えたんだと。